形成外科卒後臨床研修カリキュラム
形成外科の分野は大別すると先天性異常に対する機能形態形成と外傷、悪性腫瘍切除後などの機能形態再建および美容形成に分けられる。この内当院では主として他科との悪性腫瘍の外科的治療における再建手術を多く扱い、患者の術後の生活の質の向上を目指している。そして歯科口腔・形成外科学講座としての特性を生かして、唇裂口蓋裂における他科との連携によるチーム医療の中核として治療活動を行っている。また、本研修プログラムでは形成外科の分野で幅広く応用可能な知識の習得を考えており、そのひとつに、創傷治癒の基本を良く理解した上で、個々の患者の状態に基づき実際の創傷の状態を診断し、的確な初期治療を行う能力を獲得することがある。これは外傷治療時や外科的治療のアプローチとして皮膚を取り扱う場合など様々な治療の基本となるからである。
1.一般目標
- 基創傷治癒・自家組織移植に関する基礎知識を理解する。
- 形成外科的手技を理解し、その基本手技を修得し、一般的外科治療にも応用できる。
- 癌治療拠点病院の中での形成外科の役割を理解し実践する。
- 先天性疾患の治療に形成外科の役割とチーム医療の重要性を理解する。
2.行動目標
A.経験すべき診療法・検査・手技
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基創傷治癒・自家組織移植に関する基礎知識を理解する。
① 形成外科的創傷処置 、外傷への対応、② 包帯法、dressing法、③ 各種縫合法(創傷処理法、局所皮弁・筋皮弁・遊離組織弁を理解する)、④ 採皮(小範囲の分層・全層植皮術を指導のもとで実施できる)、⑤ 簡単な瘢痕および腫瘍等の切除、⑥ 熱傷の局所処置
- 頭蓋顔面領域の先天異常を列挙してその病態を理解する(特に唇顎口蓋裂について)。
- 腫瘍切除後の再建方法を列挙しその適応を理解する(有名血管に基づく主要組織弁による再建法を理解する)。
- ケロイド,肥厚性瘢痕の病態を理解し治療方針を立てることができ、その予防対策が行える。
- 瘢痕に対する後療法の重要性を理解し適切な処方・指導ができる。
- 手術後の創トラブルや褥瘡の病態を理解し,他職種と協力して治療方針を立てることができる(創傷治癒に留意した適切な外用剤や創傷被覆剤の貼付を行い、創処置・創床管理が実施できる)。
- 形成外科診療における他科との協力体制を理解する(他科の外科治療法を理解する)。
- 病歴聴取に際して患者の社会的背景やQOLについて配慮できる。
- その家族に対し遺伝相談などを含めた適切なアドバイスができる。
B.経験すべき疾患群と目標
- 新鮮熱傷
- 顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷
- 唇裂、口蓋裂
- 手、足の先天異常、外傷
- その他の先天異常
- 母斑、血管腫、良性腫瘍
- 悪性腫瘍およびそれに関連する再建
- 瘢痕、瘢痕拘縮、ケロイド
- 褥瘡、難治性潰瘍
- その他
3.診療スケジュール
9:00 | 12:00 | 13:00 | 17:00 | |
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午前 | 昼食 | 午後 | 夕方 | |
月 | 手術 手術 |
手術 病棟・他科再建 |
術後検討 | |
火 | 教授回診・病棟
外来 |
病棟 他科再建 |
医局会・抄読会 ・術前・術後検討 |
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水 | 病棟回診・外来手術 | 他科再建 | ||
木 | 外来 | 病棟 他科再建 |
術前検討 形成外科抄読会 |
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金 | 手術 手術 |
病棟 |
4.研修協力病院での研修
日本海総合病院、山形済生病院、公立置賜総合病院での研修を予定している。日本海総合病院では外傷から再建手術まで幅広い症例を経験できる。山形済生病院では県内有数の分娩数を誇り、NICUも充実しており新生児検診を通じて先天性疾患を学ぶことが可能である。置賜総合病院では、県内南部地方の拠点病院で、顔面外傷を中心とした研修が充実している。